シネマ!みちブログ

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★4以上の映画が好きな、普通の映画レビュー。雑記も多し。

【わたしを離さないで】カズオイシグロ小説版読んで【情緒を言語化することのスゴさ】

こんにちは、みちです。

映画は先日見たので。

 

 

giftfromsea.hatenadiary.jp

 

映画は、あらすじの衝撃と映像の刺激が大きくて、小説は流れを知っているにもかかわらず、更に楽しむ事ができた。面白いから、344ページあるこの作品を2日で読んだ。

 

  

わたしの名前はキャシー・H。いま三十一歳で、介護人をもう十一年以上やっています。

 

このはじめの文章で、映画のキャシー、そのもの!と感じた。

 

感情の起伏が緩やかで、悲しみを深く感じつつも静かに受け止めて、泣き叫ぶよりも、ポロポロ涙が流れるままに、風に吹かれるみたいな感じ。

 

映像だと、見た目であらわせるけど、文章でも人柄が出るとは。

 

やはり、キャシーの場合は、なによりも、ですます調であり、丁寧な言葉であるのが特徴。これで、ずいぶんと几帳面で、優秀な介護人であることが感じられるから不思議。

 

親友のルースは、普通の女子の話言葉でありながらも、負けず嫌いで頭の回転が速く立ち回りの上手い人柄だと感じられるのだ。

 

親友かつ想いを寄せるトミーの口調に、違和感があり、英語ならどうなっているのかな、と原作が気になる。

 

残念なのは、この物語の最高の見せ場であり、涙が流れる場面での

 

「牛がいなくて良かったぜ。暴走が起こってたかもしれんな。」

 

〜だぜ、に違和感を感じ続けて、見せ場で再びの口調に、出てきた涙も止まるわー。

翻訳ってムズイ。

 

この物語は、あらすじだけでも、かなり興味深い。

まだ知らない人のために、ザックリ言うと、

 

臓器提供の為に、クローン技術によって生まれた人間の、幼少期から30才くらいまでの話、である。

 

舞台は、イギリス。

 

風や野原、丘、森、なんていう言葉が出てくると、抱くイメージは、完全に嵐が丘

イギリスは行った事ないから余計に想像だけは膨らむ。

 

どんよりしている空、風に揺れる野草、シトシト降る霧雨、遙か遠くまで続く緩やかな勾配の丘、煉瓦造りの牛舎にサイロ、みたいなイメージ。

 

あながち、この想像が覆されることもなく、物語の見せ場では、まさにこんな場所、いやもっと鬱蒼としたもっと勾配のある急斜面、ドロドロな土、突風の中で繰り広げられていた。

 

映画では平坦な道路だった記憶なので、そこはやはり映像の強みというか、あの場面はトミーのやり場のない絶望感だけが伝わりさえすればいいので、場所はどうでもいい。

 

文章だと、その場所の描写も大切な要素であり、絶望感この上ない感じ、まさに泣きっ面に蜂、と言う感じと、二人の暗雲たちこめる今と未来を暗示していて。

 

景色や状況の描写、登場人物の心境、関係性が、物凄く細かくて、だからやはりノーベル文学賞作家なのだ、と圧倒される。てか、面白い作品は全部そうなのかもだけど。

 

とりわけ、女子どうしの、焼きもちや裏切りの心理描写には驚きと同時に、男達でも感じているの⁈と。カズオイシグロさんは、なんでこんなに、ドンピシャリと心理を突いてくるのか?

 

人間共通のものだから。という気がした。

 

あなたはどんな風に感じるでしょうか?

 

ではまた!

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