こんな夜更にバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち
フリーライター渡辺一史さんが、介助ボランティア取材するうち、自らもボランティアに組み込まれながら、いろいろ思うこと、気がつくことを悩み、綴った作家デビュー作。
もくじ
- 読後の感想
- 鹿野靖明さんについて
- 障害者福祉について
- 健常者という普通
- ボランティアする人々
- 人と人の関わりについて
- まとめ
読後の感想
大晦日の紅白を聴きながら、著者がどの様に、障害者と介助者の関係をまとめあげるのか、鹿野さんの病状や死生観について知りたくて、夢中で読んでしまった。
著者はものすごく悩んでいたので、そこがまた良かった。
福祉制度や、障害者に対する差別偏見などに満ち溢れる今の日本についての愚痴に終わるなら、つまらない。
感動させようとするのはやめて欲しい。
鹿野さんを人格者と崇めたり、ボランティアの人々が善意で溢れているだけなら、嘘っぽい。
そんな見方で読み進めて、最後まで、期待は裏切られることなかった。深掘りしながらも、ボランティア一人ひとりを傷つけることなく、その動機や継続する理由について、わかりやすく書いてあり、素晴らしいの一言。すごい文章力。
最後の章にきて、鹿野さんの死を迎えてしまう。お葬式の連絡をしたり、参列者の人の多さに驚愕したり、鹿野さんの住処の整理を通して、家族のような役割を果たす著者。改めて問う、人と人の関わり。
あたしはーーーどうやって人と付き合ってきただろう、、これからはどうする?と自問している。
鹿野靖明さんについて
鹿野靖明さんは、小学6年の時に、筋肉が衰える病気であると診断される。妹が、肢体不自由かつ知的障害を持っているため、自立心が強い。
中高校時代を過ごした施設が、すごく嫌だった。
人口呼吸器をつけており、24時間の介助が必要。寝返りもうてないので20分おきの体位交換のため、寝不足。不眠。
ケア付き住宅で、自立生活をしている。
障害年金と生活保護で生計をたて、有償、無償ボランティアに介助を依頼している。
一度結婚して離婚している。子どもはいない。妻が、自分の介助ボランティアと恋に落ちていた、と離婚後に知る。(慰謝料10万で、酒を飲むくだりが悲しい)
自分の気持ちに正直。欲望も隠せない。
介助ノートでボランティアと意思疎通をはかる。
障害者福祉について
障害者だけ集めた施設はいらない。
障害者に必要なサービスは、今後高齢者が増える日本の健常者にとっても、必要なサービスだ。
健常者という普通
鹿野さんは、夜あまり熟睡できない。想像してみてほしい。20分位ごとに、床擦れができないように、体をずらしてもらうのだ。八時間睡眠としても24回。起きちゃうでしょう、ふつうに。そのために不眠症。
バナナ食べたい、と介助ボランティアを起こし、バナナの皮をイラつく態度でゴミ箱へ投げすてた介助者。
イラつく介助者に怯まず、もう一本、と言う鹿野さんに、怒りを通り越して、もうなんでもしてやろうじゃないかと思うボランティア。
人の自然な欲求を満たすことが、鹿野さんだとワガママと言われてしまう。
健常者なら、当たり前でふつうのことだが、人手を借りるなら、我慢しないと、ワガママ。
ボランティアする人びと
福祉士になりたい学生。
医師になりたい学生。
社会的活動に参加したい主婦。
精神的に埋めたい、欠乏感ある人。
弱い人をみて、安心したい人。
人と人の関わりについて
鹿野さんとボランティアが深く広くつながりあいながらも、別れもあり、ケンカもある。
鹿野さんは、なんでこんなに格闘して生きているんだろうね、と自問していた。
死んだほうがましだ、死なせてくれ、と言われていた元の妻がつぶやく。
あなたは自分で命をたつことも、手助けしてもらわないと出来ないの、と。
最後に息を引き取った場所は病院で、有償のプロ介助のかたが看取ったという。
両親はじめ、有償無償ボランティアを帰した後の、死、だったのだが、鹿野さんが望んでいたものかもしれない、と。
ボランティアには、責任を感じてほしくないという。
まとめ
とても濃密な人間関係。生きる上で絶対必要ならば、超内向的なあたしでも構築するのかもしれない。
どこまで医療や治療をしてもらうのか。
誰に頼るか、どのように助けてと言うのか、悩む時がくれば、またきっと鹿野さんのことを思い出すだろう。
あなたはどう感じるでしょうか?
ではまた。